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A3!のストーリーの良さを言語化したい 〜④劇団員のお芝居の傾向を分類してみる~【エースリー】

 

こんにちは。らべです。今回はストーリーというよりキャラクター造形の方面の話になってしまいますが、A3!は劇団員の多様な描写が上手いということを分類・例示しつつ褒め称えてみようと思います。各種ストーリーのネタバレを含みますのでお気を付けください。

前回記事:(A3!のストーリーの良さを言語化したい 〜③ヘイト管理が上手い~ )

 

 

劇団員を7つに分類してみる

各劇団員を、特に初期の強みや課題をもとにして、①経験、②才能、③器用さ、④資質、⑤熱意、⑥努力、⑦外的要因の七つに分類してみたいと思います。これらの要素は単独で成り立つものではなく、むしろ相互に関わり合うものですが、それぞれの劇団員の最も特徴的な部分を抜き出して考えることとします。

それぞれの「該当劇団員」として一人につき一要素ずつ当てはめ、適宜括弧書きで次点としてその要素を持つ劇団員を記載します。この分類をもって、劇団員たちが個別に得意不得意な分野を持っていることや、お互いの強みで弱みを補強していることを述べ、初期の問題解決をどのように達成していたかを分析してみようと思います。

 

①経験

該当劇団員:天馬・太一・左京・紬・丞(三角)

何事においても経験は大きな糧となりますが、A3!では春組は全員初心者で、夏組から演技の経験者が登場し、実力の面で組を引っ張る存在となっています。しかし彼らは経験があるがゆえに他者とぶつかったり、経験の中で味わったトラウマを引きずってしまうというところに課題が生まれています。

皇天馬は映像での演技の経験者であるがゆえにそのギャップや幼少期の舞台経験に伴ったトラウマに苦しめられ、かつて演劇で挫折したヒロインや未経験者ばかりのメンバーによって引っ張り上げられました。一番の実力者が一番の劣等生に助けられるという王道ながらアツい展開が素晴らしいです。七尾太一は事情が事情だったので経験者であることを隠さざるを得ず、その意味では⑦外的要因にも当てはまる部分が大きいかもしれません。しかしFallen Bloodで摂津万里に指摘されたように、場数を踏んでいることが大きなアドバンテージとなっています。古市左京は舞台に上がっていたわけではありませんが、円熟した台詞回しで初期から即戦力とされていました。その反面、自分の年齢や経歴との隔たりから周りと距離を取りがちであったことを課題としており、ストーリーの中で人生経験を重ねたがゆえの心情にも踏み込んでいます。月岡紬・高遠丞は特に高い実力を持つ二人ですが、そのぶん互いのお芝居にも強い感情が向いており、ぎくしゃくした関係が長く続きましたよね。四つ目の座組にして、互いの演技の質の違いを意識したことが自分の演技をも変質させてしまい、それゆえにさらに相手との関係を悪化させてしまうという新たな切り口からも経験者の弱みが描かれています。

彼らは、基本的には技術面で他の劇団員を導く立場として、パーソナリティの掘り下げでは経験の中での傷を癒やされていく存在として、繊細に描写されています。

 

②才能

該当劇団員:三角・密

「才能」とまとめてしまうと元も子もない表現ではありますが、普段の様子からは想像のつかないお芝居をする二人を特に該当者とします。斑鳩三角は「じいちゃん」からお芝居を教わっていたようなので①経験にもやや被る部分があるものの、どちらかといえば彼のお芝居の質感は天才肌であることに起因しているように思われます。

そして、斑鳩三角がほぼノータイムで憑依するようにガラリと雰囲気を変えるのに対し、御影密は演じる人物の情報を詳しく詰めていった先のゴールに入り込むのが限りなく上手いという違いがあるように見受けられます。同じように理論では説明しづらい実力の高さを持つ天才タイプのキャラでも、そこに至るまでのアプローチが違っているためにそれぞれの個性が見えてきます。

また、非常に高い実力を持っているとはいえ、無意識下の心的要素が影響しやすく、上手くいかないときに原因の切り分けが難しいことがネックになっていると言えそうです。

 

③器用さ

該当劇団員:真澄・至・千景・万里

②才能ともやや似ていますが、演技を始めた瞬間にいきなり豹変するような爆発的なパワーというよりも、⑥努力の過程をある程度ショートカットできる能力として定義づけています。摂津万里に代表的ですが、演劇に限らず他の多くのことも要領よくやれる人、演劇を始めた動機が不純な(ある意味では純粋な)人々を集めてみました。

器用でよくまとまったお芝居ができるため初期から重宝されるものの、それ以上に伝わるものがどうしても少なくなりやすく、さらに自分が容易に上手くできるがゆえに技術の低い人と衝突しがちであることや、熱量がいまいち足らないことが課題となりがちです。特に⑤熱意と対になった描写が多いため、詳しくはそちらで言及します。

 

④資質

該当劇団員:シトロン・誉・東(幸・臣)

技術以外の、本人から匂い立つ雰囲気など、持って生まれた演劇において+αになるものをこのように呼ぶことにします。誰もがその人固有のイメージというものは持っているものですが、たとえばシトロンは出自から来る存在感に、有栖川誉は芸術的な知見から来る個性や気品に、雪白東は人生経験から来る色気に、他と一線を画すアドバンテージがあります。皇天馬に「自分の見せ方をわかっている」と評された瑠璃川幸や、初期に発声やガタイの良さを褒められた伏見臣なども、この点である程度長けていると言えそうです。

これらは一朝一夕では身につかないため他の人には出せない強みとなる反面、変えるのが難しいのである意味ではそのイメージから逃れられないとも言え、どこかでその打破に悩むということもありえるでしょう。たとえばシトロンは「セレブ臭」のする役に対し忌避感があるようですが、それが最も似合ってしまうのも事実です。奇術師たちの純愛ではそこに本人の持つ愛嬌をプラスすることで、嫌味な印象を軽くするということに成功していました。

ここまでは入団時までに積み上げたものや生まれ持ったものについての分類ですね。

 

⑤熱意

該当劇団員:咲也・椋・九門・十座

ここからは、主に入団後に培っていくイメージのものについて記述していきます。

⑥努力を積み重ねられるのも高い熱意があってこそです。ここでは特に演劇という表現方法への思い入れが初期から強い劇団員を選んでいます。また、A3!では熱意が高い劇団員ほど技術的に劣るという造形が多くなされていうので、要領があまり良くなく技術の向上に時間が掛かりがちな印象の劇団員を多くピックアップしました。

③器用さとの対立概念としての側面が強く、特に佐久間咲也と碓氷真澄・摂津万里と兵頭十座のコンビはその代表例でしょう。佐久間咲也と碓氷真澄は動機は違えど一応大きく括れば演劇というものに両者の気持ちが向いていて、それゆえにぶつかり合うというイメージであったのに対し、摂津万里と兵頭十座は熱意と技術力の高さが完全に正反対で、よりこの二つの対比がわかりやすいと思われます。また、茅ヶ崎至や卯木千景など演劇自体が入団の動機でなかった劇団員たちは佐久間咲也の純真さによって演劇の世界に引き込まれており、人を突き動かすのは結局は熱意なのだと思わされます*1。ひとたび熱意で周りを惹き込むと③器用さに長けた劇団員からアドバイスを受ける展開にもなりやすく、相互の弱みを埋め合うという濃密な関係が描かれるのも魅力的です。

他にも、向坂椋・兵頭九門・兵頭十座らいとこの三人組が異常なまでにぎこちないところには前回触れた「血縁」の要素が含まれており、劇団員への愛情を増幅させる人物像の形成が成されています。

このような対比関係や類似関係を利用した劇団員同士の関わり合いと、似た構図の中にも少しずつ違った要素を盛り込むバリエーションの多さがA3!の魅力だと思います。

 

⑥努力

該当劇団員:綴・幸・一成・臣・莇(全員)

最もわかりやすく、かつ本人次第でいかようにも伸ばしていきやすい分野かと思います。該当劇団員の五名はものすごく上手いわけでもないがものすごく下手というほどでもない、大抵の人は演劇を始めたらこうなるだろうというリアルなラインからのスタートと言えそうです。というのも、兼業組は特にそちらの仕事との両立が課題となることが多いため、お芝居の傾向自体にはそこまで特徴が強くない印象を受けます。時に兼業で得た知見を生かしつつ、とにかく地道に技術を向上させている劇団員たちです。

もちろん全員が努力を積み重ねていって最終的には公演の成功に向かっていくため、語弊はありますが、ある程度消去法というイメージで該当劇団員を選びました。

 

⑦外的要因(課題)

該当劇団員:ガイ(シトロン・太一)

ここまでは劇団員の強みをまとめていましたが、例外的に特殊な事情でお芝居のストッパーとなるような課題を抱えていた劇団員をこのように括ることにしました。この因子さえ打破できれば覆い隠されていた上記の能力が発揮できるのに…… という要素を明確に持っているというイメージです。ガイはハイスペックなので強いて言えば③器用さにも当てはまる要素がありそうですが、事情が事情であることや、器用ゆえに熱量が低いというタイプでもないことから、このような特殊な位置づけといたします。

特にシトロン・ガイの2名は特殊な事情を持っており、言語の壁や押し殺した感情を取り戻すことなど、上記の能力だけではどうにもなりにくい部分で壁に立ち向かわざるを得ませんでした。太一は経験者であることを隠す必要があった点で力を出し切れなかった上、心情的にも翳りが出てしまっていましたよね。

広義では、イベントストーリーなどで主に主役の劇団員の前に立ちはだかる壁などもここに含めていいと思います。

 

まとめ

以上、個人的見地からの分類ですが演劇を上達させるための七つの要素を抜き出し、A3!の劇団員の描写の多様さを例示しました。私は一つの題材についてそれぞれのキャラクターの強みや弱みの差がよくわかるコンテンツを好む傾向にあるため、特にA3!のこのような側面を楽しんでいます。長所と短所は往々にして表裏一体の存在であるため、今後はこの表裏一体な要素を活かしたストーリー作りについても言及したいです。

もちろん全劇団員が少なからず各要素を持ち合わせているものであり、ここで提示したのはあくまでその強弱の兼ね合いによるものです。これらを劇団員ごとにステータス値のグラフのように図示してみても面白いのではないかと感じました。

 

*1:???「結局てめぇなんだな、俺をアツくさせんのは。」