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【A3!】ブルライ記念・私の #えすり楽曲語り 後半/らべ【エースリー】

 

こんにちは。らべです。

#えすり楽曲語り
ライブも近く、楽曲が解放されたこのタイミングで、えすりの曲のお話しをしませんか?語るツールとして質問シートを作成しました!ツイートやスペースなど、話の種にご活用ください。(タグも使って貰えると嬉しいです)
みなさんのえすり楽曲にまつわるお話、ぜひ聴かせてください! pic.twitter.com/2NDEPCsGqd

— こま (@komachi_aaa) 2022年4月7日

前半(ブルライ記念・私の #えすり楽曲語り 前半/らべ - すこやか (hatenadiary.com))に引き続き、こちらのツイートの質問に答えてみようと思います。

 

16.聞くと気分が上がる曲

「 進め!パイレーツ」は勇ましさのあるイントロがとにかく好きで、さらに歌い方にも力がこもっているので戦闘力が上がる気がします*1。テンポ的にも闊歩したくなりますよね。「BUZAMA」と双璧を成す好きな曲調です。

 

17.感動した曲

少し質問の趣旨とは逸れるかもしれませんが、 「UNMASK」は最後の転調に感動しました。重厚なサウンドをバックに清涼感ある月岡紬の歌声と情念を孕んだガイの歌声が交差していてただでさえ良い曲なのですが、さらにそこから音も歌い方も開けていくようなイメージになることに驚きがあり、聴くたび感動します。

 

18.泣いた曲

「 思い出のねじ巻き」です。ぜんまい仕掛けのココロが物語としてかなり好きなのと、A3!にしては珍しく(?)ビターエンドなこともあって…… という感じです。異邦人も好きなストーリーなので、人間と人に作られた存在(人に生死?を握られている存在)という関係に弱いんだと思います。イベントストーリーや公演内容に触れる記事もどこかで書きたいです。

 

19.カッコいい曲

「Qと銃」は本当にお洒落で、カッコいいという言葉がぴったりだと思います。九門と十座の名前に含まれた「9」と「10」を「Qと銃」と表すところからして洒落ていますよね。「Just For Myself」でも触れましたが、公演曲にも劇団員本人を思わせるようなワーディングがあるとテンションが上がります。公演と同様に普段のイメージとは違う兵頭兄弟の一面を引き出していますし、何より歌が上手いですね。

 

20.可愛い曲

「Tailor Tailor!」は瑠璃川幸らしい可愛らしさに溢れたキャラクターソング性の高い曲調で、毒っ気も交えつつ装う楽しみを明るく歌っていて素敵です。そもそも服を纏う・装うということ自体が体を包み隠し飾る行為に他ならないわけですが、彼にとってそれは決して本心を隠す・表面だけを取り繕うことではなく、むしろ内面を表現するための最大の手段なのだという覚悟が感じられます。「Minority」は内面描写に軸を置いていたので、2曲目でキャラクターらしさ・キャッチーさを前面に押し出せているところに、彼の変化やA3!の多様さを感じます。

 

21.穏やかな気持ちになる曲

エーアニ関連でも触れましたが、チルくなりたいときによく「オレンジ・ハート」を聴いています。弦を優しく弾くような音に少し抑えた歌い方のメンバーの若さ・明るさが乗っかって、まさに穏やかになれる曲です。

秋組の楽曲は大好きなのですが、体調が悪いときなどに聴ける感じではないので(普段の夏組もあまりそういう感じではありませんが……)、どの曲もどこかのタイミングで聴きたくなるような大切な存在なんですよね。

 

22.つい口ずさんでしまう曲

曲を口ずさむことはないので、よく頭の中に流れる「The Prince in Full Bloom〜花の王子と従者様~」をチョイスします。「さぁ、ゆこう! プリンセスのもとに!」という部分の語りかけ感、ミュージカルっぽさが楽しいです。

 

23.推しキャラの歌う曲の中で一番好きな曲とおススメポイント

「Lone Wolves」か「Muddy Hero」なんですが…… 選びきれませんでした。どちらも、曲にも歌詞にもそれぞれで表現すべき人物・物語のすべてが詰まっていると思います。

 

24.春に聴きたくなる曲

「 Spring Has Come!」は、ブルライ1stでの手を左右に振る振り付けが印象的で、春らしいなと思います。まさに春が来た喜びを噛みしめながら聴きたい曲です。

 

25.夏に聴きたくなる曲

「夏のジレンマ」は、普段オレ様な皇天馬のアンニュイな一面が出つつも、あくまで芸能人としての外側の顔を見せているイメージというバランスが絶妙だと思います。楽しく賑やかな夏組も好きですが、泣きのある夏っぽさに弱いのかもしれません。

 

26.秋に聴きたくなる曲

「ファインダー越しの絆」は秋らしい重みのある質感と情景描写が印象的です。

しかも素晴らしいのが、あくまで冒頭の「季節が移ろい 空が流れてく」は、美しい言葉選びとは言え単に時間経過に伴った自然現象に過ぎず、このおかげでさらりと初期の伏見臣の主体性の低さが表現されているところなんですよね。まだ伏見臣自身は止まっていて、周りだけ勝手に動いているイメージです。心情が変化してからは「相棒を連れて 駆け出す街並み」や「ありふれた景色/風は気持ちよく」と、バイクを克服して積極的に動き出したからこそ周りの景色が流れていっているという対比が生まれています。

伏見臣推しとして、いつか彼の参加曲の歌詞について別記事にするなどして語りたいなと思っております。

 

27.冬に聴きたくなる曲

「to bloom…」の音作りに冬を感じます。歌唱力の高いメンバーの声の重なりが美しく、冬組だから歌える歌だと思っています。ガイ加入後の「Precious to us~僕らの季節~」に最後のメロディーが受け継がれているというところ含め、静かに歩み寄る冬組らしさ・冬らしさが詰まっていて好きです。

 

28.「この曲のこの歌い方が好き」という箇所があれば教えてください

「Lone Wolves」の「お前が居たその足跡も全部大切だから」に力が入っている感じが大好きです。異邦人の那智の「前だけ見て突っ走れ」という言葉、文字通り前向きで素晴らしいのですが、それだと那智が見えなくなってしまうところに寂しさもあったので、異世界歓迎!元ヤン食堂で「お前のいる後ろも大切」というアンサーが出たことがすごく嬉しかったんですよね。そこも汲んだ歌詞であることを踏まえ、感情が全面に出ていて、つくづく良い歌だと思わされます。生放送で「綺麗に歌おうとしなくていい、多少荒くなってもいいとディレクションされた」とのお話がありましたが、ナイス判断だと感じました。

あとは趣旨から逸れますが、「Ever☆Blooming !~ 秋組 ver~ 」は冒頭の「Blooming!君と」の「と」が強すぎて好きです。摂津万里の歌い方のクセが強いのはよく言われることですが、兵頭十座もけっこうクセのある方なので…… 組ごとの聞き分けが楽しい曲ですよね。

 

29.一番好きな歌詞を教えてください

「Muddy Hero」の「どうして/世間(おまえ)は 虚像を 崇め求めてく 英雄崇拝」です。リズムへのハマり方も内容も良いなと思います。ヒューイとブラッドは光のヒーローと影のヒーローとして対比され続けますが、あくまでその基準は世間にどう評価されるかでしかありません。テロリストとの勇気ある格闘も正当に評価されなかったブラッドはもちろんですが、安全上の観点から試合を止めようと提言しても無視されたヒューイもまた、人に求められる偶像を体現し続けること、つまり世間からの評価に苦しんでいる一人です。どこか諦めのついているブラッドに対してヒューイはまだ希望を捨て切れていない様子で、わかりづらくはありますがブラッドもまたそんなヒューイに影響を受けていると思われます。そもそもブラッドが影としてしか活躍できないのは、ヒューイのようなわかりやすいヒーロー像ばかりを勝手に作り上げようとする人々のせいでもありますよね。曲全体でブラッドにスポットを当てつつ、ヒューイの苦しみも世間の無情さも切り取ってくれているこの歌詞が大好きです。

 

30.ここまで振り返った上で、一番好きな曲への思いをどうぞ!

「Muddy Hero」は語り尽くしたので「Lone Wolves」について。

ANCHORさん、「Lone Wolves」を作ってくださってありがとうございます。実は公開前、伏見臣が好きであるがゆえに「好きになりきれない曲がオフィシャルなものとして提示されてしまったらどう向き合えばいいのだろう」などという厄介な不安を抱えていたのですが、まったくの杞憂でした。伏見臣の2ndキャラクターソングが「Lone Wolves」で本当に良かったです。

 

以上です。いくつか他に書いてみたい記事のアイデアも出たので、今後書いてみようと思います。改めてこま (@komachi_aaa)さん、素敵な質問シートをありがとうございました。

 

*1:秋組の女、すぐ闘おうとする

【A3!】ブルライ記念・私の #えすり楽曲語り 前半/らべ【エースリー】

 

こんにちは。らべです。

#えすり楽曲語り
ライブも近く、楽曲が解放されたこのタイミングで、えすりの曲のお話しをしませんか?語るツールとして質問シートを作成しました!ツイートやスペースなど、話の種にご活用ください。(タグも使って貰えると嬉しいです)
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— こま (@komachi_aaa) 2022年4月7日

 

こちらのツイートの質問シートを拝見し面白そうだと思ったため、ブログという形式で恐縮ですが回答してみます。

伏見臣/秋組推しなのでどうしてもそちらに思い入れ込みで偏りがちですが、そもそも好きな曲調・方向性が秋組のイメージと合致しているというのもあるにはあります。

長くなりそうなので前後半に分けます。

 

1.最初に好きになった曲

「Just For Myself」です。もともと伏見臣という私が好きそうな男がA3!にいると伝え聞いており、某ドルマスター某deMの某公務員ユニットの「○○がカラオケに行ったら」系の動画*1でこの曲を聴いたことをきっかけに、曲がかっこいい!この子(※七尾太一演じるゼロ)は女性を演じている男性なの?などとますます興味を持ったのを覚えています。

ちなみにその前に、某プリズムの煌めきアニメの「カラオケに行ったら」系動画で「シトロンの正しい日本語講座?」もおぼろげながら聴いたことがありました。当時はA3!を知らなかったのですが、五十嵐さんらしい(?)ヘンテコで面白い曲だなと思ったことがあります*2

 

2.ACT1で好きな公演曲

「楽園オアシス」、「進め!パイレーツ」、「一夜限りの相棒」、「Just For Myself」、「BUZAMA」あたりです。秋組はメンバーやストーリーも好きなのですが、同じくらいキャラソンの曲調も好みに合っているなと思います。「楽園オアシス」はオリエンタルな曲調と二人のコミカルな掛け合いが、「進め!パイレーツ」はイントロの中毒性の高さと普段とのギャップのある歌唱が、「一夜限りの相棒」はロカビリー路線と歌唱力の高さが、「BUZAMA」は昭和歌謡風なのがツボです。「BUZAMA」はメロディー・オケなどの曲調の面で全曲の中でもトップクラスに好きかもしれません。

 

3.ACT2で好きな公演曲

先ほどから伏見臣補正感が否めませんが、「Muddy Hero」が好きです。イベントストーリーを読む前に聴いて素直にかっこいい曲だと思ったのですが、物語を知ってから聴くと二人の対比やそれぞれが抱いている葛藤も表現され尽くしていて改めて好きになりました。世間的には成功者のヒューイも実は自分が偶像としてまつり上げられることにままならなさを覚えているというところまで汲み取って歌詞にしてくださってありがとうございます(ここまで一息)。Fallen Bloodがそもそも公演として非常に好みなので、いつも「公式イメソンだ……」と思いながら感謝して聴いています(?)

「嘘つきは魔法の始まり」はジャジーなテイストかつミュージカルのように鮮やかな状況描写がいいなと思っています。さらに佐久間咲也のようなタイプのキャラクターがこういったお洒落な曲を歌う機会は少ないと思うので、これも公演曲の醍醐味という感じがします。

「ロードトゥ饅頭マスター!」もこれまでの秋組の路線とは違いますが、チャイナテイストの曲が好きなので聴いていて心地いいです。

 

4.ACT3で好きな公演曲

「Hungry Neighbors」が好きなんですが、本当に伏見臣がいるから言ってるだけとかじゃなくて…… 全部ちゃんと本当に好きなんですよ曲調的にも…… でも伏見臣がこういうイメージに合うと思ってキャスティングされていることも事実ですし…… どうすればいいですか?(?) 元ヤンらしいゴリゴリのバキバキな曲作りにコメディっぽさ・異世界モノ風世界観が噛み合っていていいですよね。

他には、静かに始まり叫ぶように気持ちをぶつける「Wandering Ghost」や社交ダンスとヒップホップの魅力が上手く融合した「STEP」も好きです。これらの曲はまだまだ発売から日が浅いのでもっと聴き込みたいところです。

 

5.キャラソン1stで好きな曲

「SICK SICK SICK」や「ペテン師の憂鬱」、「晴転のシンカー」、「餓鬼扱い」などが好きです。

「SICK SICK SICK」は、音楽好きの碓氷真澄らしい玄人っぽい音作りの中に、とてつもない監督への愛情と「演技」や「台詞」という演劇モチーフらしい言葉選びが散りばめられていて良いですよね。「ペテン師の憂鬱」はさすがオーイシマサヨシさんと言うべき完成度の高いキャラクターソングで、裏声を駆使した歌唱も相まって非常に印象的です。「晴転のシンカー」は爽やかかつ文学的な歌詞が美しく、キャラソン文化に馴染みのない人にも勧めたいくらいのA3!屈指の名曲だと思っています。タイトルの「晴転」は造語だと思うのですが、字面だけ見ると「暗転」かな? と一瞬思わせておいて「晴」であるという聴き手の内部で起こる作用自体がまさに「晴転」で、すごいギミックじゃないですか?*3「餓鬼扱い」は青臭くも格好良い曲調が好みで、ラップも圧巻です。泉田莇のまだまだ青い少年だけどクールで、でも荒くれていて…… というバランスが声や曲で体現されていて好きです。

 

6.キャラソン2ndで好きな曲

推しの欲目を排除しても「Lone Wolves」が本当に神曲すぎると思っています。狂狼時代の荒っぽいカリスマ性を混ぜ込みつつも温かく前向きに未来を見据え、かつ聞き手をも励ます、まさに今の伏見臣にしか歌えない曲だと思います。自分について主体的に語ることすらあまり積極的にしてこなかった伏見臣が今や「胸を張って生きていこうぜ」とこちらに呼びかけられるまでになったのが感慨深いです。どう考えても音痴ではないこと以外完璧です。

また、「Real Luck」はゲーマーとしての茅ヶ崎至を引き続きピックアップし、ちょっとひねくれつつも一途に家族への愛を歌うのが好きですね。演劇という新しい大事なものを見つけても、ゲームもずっと好きでい続けるからこそ彼は良いんだよねと思っているので。

「エモーション」は「STEP」に続きDECO*27さんの作ということで、ボーカロイドにある程度親しんでいた私はかなりドキドキしていました。結果的に、意外性があるのに有栖川誉の2ndキャラクターソングはこれでしか有り得ないというような化学反応が起きていてすごいと思いました。個人的にDECO*27さんには卯木千景にも楽曲提供してほしいのですが、リベルさんはどうですか?(?)

 

7.ユニット曲で好きな曲(各組、リーダーズ、ルーキーズ、全員楽曲等)

秋組のユニット曲が好きなのは前提として()、「GOLDEN ENCORE!」や「Ever☆Blooming!」も好きです。どちらも華やかで、ザ・演劇をモチーフにした楽曲!という感じがしますよね。特に「Ever☆Blooming!」は各組の声質の違いや、それぞれの歌詞を担当する劇団員ごとに違った意味を持つところが好きです。

その他のユニットで歌っている好きな曲は、エーアニの曲として次の質問で回答します。

 

8.エーアニで好きな曲

秋組のオタクなので、ロック調は維持しつつもエンディングらしい穏やかさも兼ね備えた「ZERO LIMIT」がどうしても好きなのですが、「オレンジ・ハート」も聴いていてしんみり温かくなるので好きです。

「オレンジ・ハート」と「Circle of Seasons」は、劇団員の名前が歌詞に入っているという点で軽率に好きになりました。

 

9.エーステで好きな曲 第3位

あまり詳しくないので省略します。

 

10.エーステで好きな曲 第2位

あまり詳しくないので省略します。

 

11.エーステで好きな曲 第1位

エーステに明るくないのですが、秋組の「スパイラルエモーション」は聴いたことがあり、良い曲だなと思いました。細胞レベルで秋組が好きなんだと思います。

 

12.エームビで好きな曲

未視聴なので省略します*4

 

13.ゲームのお気に入り曲、どの3曲にしていますか?

実は設定していません。好きな曲が多すぎて3曲は選びにくいのと、曲調がガンガンした感じの曲に偏りそうなので……

 

14.一番好きなCDジャケット

「Blooming AUTUMN EP」のジャケットは「伏見臣、紫も似合うんだ……?!」という気づきを与えてくれたので好きです(?)

 

15.一番好きな曲のタイトル

何度も指摘されていることではありますが、「Just For Myself」は、人のために自分を後回しにすることを課題として指摘された伏見臣が歌うと二重に意味が重なって美しいなと思います。

ストーリー中には出てこない単語なのにこれを思いついたゆよゆっぺさんは偉大です。

 

前半は以上です。エーステ/エームビ関連曲は詳しくないため大部分を省略してしまいました。ブルライ前後でまた変化する可能性はありますが、現時点での楽曲語りとして記録しておきたいと思います。

 

*1:特定のジャンルと歌っている声優さんが同じ別ジャンルの曲をメドレーのように紹介する動画のことです。

*2:後に関ジャニ∞の「乱れ咲けロマンス」と同じ人が作ったと知って白目を剥きました。

*3:「晴天」を意識した言葉だとは思いますし、もちろん人によって「暗転」を想起するかはそれぞれでしょうが、タイトルを見ただけで我々にも「晴転」を体験させてくるのすごすぎますよね……?

*4:特に2.5次元が苦手なわけではありません。

A3!のストーリーの良さを言語化したい 〜④劇団員のお芝居の傾向を分類してみる~【エースリー】

 

こんにちは。らべです。今回はストーリーというよりキャラクター造形の方面の話になってしまいますが、A3!は劇団員の多様な描写が上手いということを分類・例示しつつ褒め称えてみようと思います。各種ストーリーのネタバレを含みますのでお気を付けください。

前回記事:(A3!のストーリーの良さを言語化したい 〜③ヘイト管理が上手い~ )

 

 

劇団員を7つに分類してみる

各劇団員を、特に初期の強みや課題をもとにして、①経験、②才能、③器用さ、④資質、⑤熱意、⑥努力、⑦外的要因の七つに分類してみたいと思います。これらの要素は単独で成り立つものではなく、むしろ相互に関わり合うものですが、それぞれの劇団員の最も特徴的な部分を抜き出して考えることとします。

それぞれの「該当劇団員」として一人につき一要素ずつ当てはめ、適宜括弧書きで次点としてその要素を持つ劇団員を記載します。この分類をもって、劇団員たちが個別に得意不得意な分野を持っていることや、お互いの強みで弱みを補強していることを述べ、初期の問題解決をどのように達成していたかを分析してみようと思います。

 

①経験

該当劇団員:天馬・太一・左京・紬・丞(三角)

何事においても経験は大きな糧となりますが、A3!では春組は全員初心者で、夏組から演技の経験者が登場し、実力の面で組を引っ張る存在となっています。しかし彼らは経験があるがゆえに他者とぶつかったり、経験の中で味わったトラウマを引きずってしまうというところに課題が生まれています。

皇天馬は映像での演技の経験者であるがゆえにそのギャップや幼少期の舞台経験に伴ったトラウマに苦しめられ、かつて演劇で挫折したヒロインや未経験者ばかりのメンバーによって引っ張り上げられました。一番の実力者が一番の劣等生に助けられるという王道ながらアツい展開が素晴らしいです。七尾太一は事情が事情だったので経験者であることを隠さざるを得ず、その意味では⑦外的要因にも当てはまる部分が大きいかもしれません。しかしFallen Bloodで摂津万里に指摘されたように、場数を踏んでいることが大きなアドバンテージとなっています。古市左京は舞台に上がっていたわけではありませんが、円熟した台詞回しで初期から即戦力とされていました。その反面、自分の年齢や経歴との隔たりから周りと距離を取りがちであったことを課題としており、ストーリーの中で人生経験を重ねたがゆえの心情にも踏み込んでいます。月岡紬・高遠丞は特に高い実力を持つ二人ですが、そのぶん互いのお芝居にも強い感情が向いており、ぎくしゃくした関係が長く続きましたよね。四つ目の座組にして、互いの演技の質の違いを意識したことが自分の演技をも変質させてしまい、それゆえにさらに相手との関係を悪化させてしまうという新たな切り口からも経験者の弱みが描かれています。

彼らは、基本的には技術面で他の劇団員を導く立場として、パーソナリティの掘り下げでは経験の中での傷を癒やされていく存在として、繊細に描写されています。

 

②才能

該当劇団員:三角・密

「才能」とまとめてしまうと元も子もない表現ではありますが、普段の様子からは想像のつかないお芝居をする二人を特に該当者とします。斑鳩三角は「じいちゃん」からお芝居を教わっていたようなので①経験にもやや被る部分があるものの、どちらかといえば彼のお芝居の質感は天才肌であることに起因しているように思われます。

そして、斑鳩三角がほぼノータイムで憑依するようにガラリと雰囲気を変えるのに対し、御影密は演じる人物の情報を詳しく詰めていった先のゴールに入り込むのが限りなく上手いという違いがあるように見受けられます。同じように理論では説明しづらい実力の高さを持つ天才タイプのキャラでも、そこに至るまでのアプローチが違っているためにそれぞれの個性が見えてきます。

また、非常に高い実力を持っているとはいえ、無意識下の心的要素が影響しやすく、上手くいかないときに原因の切り分けが難しいことがネックになっていると言えそうです。

 

③器用さ

該当劇団員:真澄・至・千景・万里

②才能ともやや似ていますが、演技を始めた瞬間にいきなり豹変するような爆発的なパワーというよりも、⑥努力の過程をある程度ショートカットできる能力として定義づけています。摂津万里に代表的ですが、演劇に限らず他の多くのことも要領よくやれる人、演劇を始めた動機が不純な(ある意味では純粋な)人々を集めてみました。

器用でよくまとまったお芝居ができるため初期から重宝されるものの、それ以上に伝わるものがどうしても少なくなりやすく、さらに自分が容易に上手くできるがゆえに技術の低い人と衝突しがちであることや、熱量がいまいち足らないことが課題となりがちです。特に⑤熱意と対になった描写が多いため、詳しくはそちらで言及します。

 

④資質

該当劇団員:シトロン・誉・東(幸・臣)

技術以外の、本人から匂い立つ雰囲気など、持って生まれた演劇において+αになるものをこのように呼ぶことにします。誰もがその人固有のイメージというものは持っているものですが、たとえばシトロンは出自から来る存在感に、有栖川誉は芸術的な知見から来る個性や気品に、雪白東は人生経験から来る色気に、他と一線を画すアドバンテージがあります。皇天馬に「自分の見せ方をわかっている」と評された瑠璃川幸や、初期に発声やガタイの良さを褒められた伏見臣なども、この点である程度長けていると言えそうです。

これらは一朝一夕では身につかないため他の人には出せない強みとなる反面、変えるのが難しいのである意味ではそのイメージから逃れられないとも言え、どこかでその打破に悩むということもありえるでしょう。たとえばシトロンは「セレブ臭」のする役に対し忌避感があるようですが、それが最も似合ってしまうのも事実です。奇術師たちの純愛ではそこに本人の持つ愛嬌をプラスすることで、嫌味な印象を軽くするということに成功していました。

ここまでは入団時までに積み上げたものや生まれ持ったものについての分類ですね。

 

⑤熱意

該当劇団員:咲也・椋・九門・十座

ここからは、主に入団後に培っていくイメージのものについて記述していきます。

⑥努力を積み重ねられるのも高い熱意があってこそです。ここでは特に演劇という表現方法への思い入れが初期から強い劇団員を選んでいます。また、A3!では熱意が高い劇団員ほど技術的に劣るという造形が多くなされていうので、要領があまり良くなく技術の向上に時間が掛かりがちな印象の劇団員を多くピックアップしました。

③器用さとの対立概念としての側面が強く、特に佐久間咲也と碓氷真澄・摂津万里と兵頭十座のコンビはその代表例でしょう。佐久間咲也と碓氷真澄は動機は違えど一応大きく括れば演劇というものに両者の気持ちが向いていて、それゆえにぶつかり合うというイメージであったのに対し、摂津万里と兵頭十座は熱意と技術力の高さが完全に正反対で、よりこの二つの対比がわかりやすいと思われます。また、茅ヶ崎至や卯木千景など演劇自体が入団の動機でなかった劇団員たちは佐久間咲也の純真さによって演劇の世界に引き込まれており、人を突き動かすのは結局は熱意なのだと思わされます*1。ひとたび熱意で周りを惹き込むと③器用さに長けた劇団員からアドバイスを受ける展開にもなりやすく、相互の弱みを埋め合うという濃密な関係が描かれるのも魅力的です。

他にも、向坂椋・兵頭九門・兵頭十座らいとこの三人組が異常なまでにぎこちないところには前回触れた「血縁」の要素が含まれており、劇団員への愛情を増幅させる人物像の形成が成されています。

このような対比関係や類似関係を利用した劇団員同士の関わり合いと、似た構図の中にも少しずつ違った要素を盛り込むバリエーションの多さがA3!の魅力だと思います。

 

⑥努力

該当劇団員:綴・幸・一成・臣・莇(全員)

最もわかりやすく、かつ本人次第でいかようにも伸ばしていきやすい分野かと思います。該当劇団員の五名はものすごく上手いわけでもないがものすごく下手というほどでもない、大抵の人は演劇を始めたらこうなるだろうというリアルなラインからのスタートと言えそうです。というのも、兼業組は特にそちらの仕事との両立が課題となることが多いため、お芝居の傾向自体にはそこまで特徴が強くない印象を受けます。時に兼業で得た知見を生かしつつ、とにかく地道に技術を向上させている劇団員たちです。

もちろん全員が努力を積み重ねていって最終的には公演の成功に向かっていくため、語弊はありますが、ある程度消去法というイメージで該当劇団員を選びました。

 

⑦外的要因(課題)

該当劇団員:ガイ(シトロン・太一)

ここまでは劇団員の強みをまとめていましたが、例外的に特殊な事情でお芝居のストッパーとなるような課題を抱えていた劇団員をこのように括ることにしました。この因子さえ打破できれば覆い隠されていた上記の能力が発揮できるのに…… という要素を明確に持っているというイメージです。ガイはハイスペックなので強いて言えば③器用さにも当てはまる要素がありそうですが、事情が事情であることや、器用ゆえに熱量が低いというタイプでもないことから、このような特殊な位置づけといたします。

特にシトロン・ガイの2名は特殊な事情を持っており、言語の壁や押し殺した感情を取り戻すことなど、上記の能力だけではどうにもなりにくい部分で壁に立ち向かわざるを得ませんでした。太一は経験者であることを隠す必要があった点で力を出し切れなかった上、心情的にも翳りが出てしまっていましたよね。

広義では、イベントストーリーなどで主に主役の劇団員の前に立ちはだかる壁などもここに含めていいと思います。

 

まとめ

以上、個人的見地からの分類ですが演劇を上達させるための七つの要素を抜き出し、A3!の劇団員の描写の多様さを例示しました。私は一つの題材についてそれぞれのキャラクターの強みや弱みの差がよくわかるコンテンツを好む傾向にあるため、特にA3!のこのような側面を楽しんでいます。長所と短所は往々にして表裏一体の存在であるため、今後はこの表裏一体な要素を活かしたストーリー作りについても言及したいです。

もちろん全劇団員が少なからず各要素を持ち合わせているものであり、ここで提示したのはあくまでその強弱の兼ね合いによるものです。これらを劇団員ごとにステータス値のグラフのように図示してみても面白いのではないかと感じました。

 

*1:???「結局てめぇなんだな、俺をアツくさせんのは。」

A3!のストーリーの良さを言語化したい 〜③ヘイト管理が上手い~【エースリー】

 

こんにちは。らべです。A3!のストーリーの良さを言語化するシリーズ第三弾です。前回(ブログA3!のストーリーの良さを言語化したい 〜②プレイヤーの演劇リテラシーを育てるのが上手い〜 - すこやか )は、A3!がプレイヤーの演劇リテラシーを向上させるのが上手いというお話をしました。今回は「A3!は登場キャラクターのヘイト管理も上手い」というテーマです。メインストーリーを読んでいることを前提に書いておりますので、未読の方はご注意ください。

 

A3!のヘイト管理の例

ソシャゲに限らず、物語の展開上誰かしらが主人公サイドないし他キャラクターと敵対する役とならなければならないことがあります。しかしこれらの役割を果たす人物が一方的に酷いことをやり過ぎたり納得しにくいことをしていたりすると、ヘイトが溜まりすぎて物語を楽しみにくくなってしまうという問題があります。特にA3!はハッピーエンドを掲げているので、少しでも予期している以上にヘイトを残してしまうと問題が解決したという明るい雰囲気に違和感が出てしまうんですよね。

最初期のA3!において、MANKAIカンパニーの前に立ちはだかる壁になったのが古市左京です。彼はMANKAIカンパニー存続の条件を厳しく取り決め、徹底的に借金の返済を迫りました。ただ、いざ彼が新生秋組の一員となったときに反発を覚えたという人は少ないでしょう。それは、彼があくまで劇団の存続のために厳しい言葉をかけていたことや、迫田ケンという憎めない付き人を従えていることに起因しています。実際にA3!1st Anniversary Book「FLOWER」でプロデューサーの沖田さんは、迫田ケンを「左京を徹底的に悪者に描くなかでの清涼剤」として投入することで、古市左京が悪い人ではないと思わせる意図があったと語っています(p210)。先を見越して登場人物の印象のバランスを取るのが上手いですよね。

碓氷真澄や皇天馬など初期から演技にアドバンテージのあった劇団員たちが初期に他の劇団員にキツく当たるシーンも、あくまで言い方が悪いだけで公演を成功させるためのものであるとわかりますし、少しずつ改善されていくからこそ受け入れやすくなります。前回述べたように初期の秋組は演劇への熱意がなかった摂津万里の目をいかにして覚ますかが課題となりましたが、春夏で培った信頼を担保に、いつか彼も演劇の素晴らしさに目覚めるだろうと思えるからこそヘイトを溜めすぎずにフリを楽しめますよね。劇団員たちがぶつかる姿などはその後の感動を生むので、このあたりに気を配るのが上手いA3!はさすがだなと思います。

このように、正論を言っている・どうしようもない事情があるなどの理由や、反省したと明らかになるなどの描写があれば、反感を買いやすいキャラクターの言動も納得感のあるものに変わります。

 

神木坂レニに代表される「そういう血だから」の魔法

古市左京が劇団員になったあとにMANKAIカンパニーを苦しめたのが、GOD座主催の神木坂レニでした。スパイや陰湿な工作などの手段でMANKAIカンパニーの解散を迫る彼にカンパニーの面々は苦しめられましたが、メインストーリーを進めるに従い、徐々に彼と立花幸夫の並々ならぬ因果が明らかになっていきます。

もちろんどのような事情があったとしても、神木坂レニがMANKAIカンパニーに対して行ったことがなかったことになるわけではありません。ただ、立花幸夫があまりにも魅惑的である種恐ろしい存在であったことが明かされることで、むしろ神木坂レニに同情したくなるようになっています。そしてこの不思議な魅力は、ヒロインたる立花いづみにも貫かれている性質であると言えます。A3!のプレイヤーはみな、見境なく劇団員を勧誘し、彼らを演劇の魅力に目覚めさせ、器の大きさをもって成長を促し続けられるヒロイン・立花いづみに惚れているといっても過言ではないでしょう。神木坂レニの回想によってこの父親にしてこの娘ありと納得させられ、周りを巻き込んでいく力の強い「立花の血」の魅力にプレイヤーも神木坂レニ同様魅了されていくのです。神木坂レニがその後のMANKAIカンパニーへの協力を約束したこととも相まって、以降は彼に嫌悪感が向きづらくなっていると感じています。

ちなみにA3!の「血(血縁)」というテーマによるヘイト管理は、立花幸夫といづみ以外の血縁者にも見て取ることができます。たとえば春組第4回公演の前の碓氷真澄の父親などは、自分勝手な理由で碓氷真澄を劇団から引き離そうとし、春組存続の壁となりました。しかしよくよく話を聞いて、碓氷真澄の持ち味である突っ走りすぎる性格が親子揃ってのものだったとわかると、なんとなく許せてしまう、なんとなく納得できてしまうという構図が生まれます。もともと好きにならせていた人物の性質をも含めて「そういう血だから」と説明することでヘイトを抑えている、なんだかんだで好感を持たせることに成功しているという印象です。

特にA3!においては「立花の血」を持つ者が周りを巻き込んでいく過程が物語の核の一つとなって(いると個人的には思って)おり、この要素を大小折り重ねて散りばめることで、憎めないキャラクターたちを作ることに成功しています。

 

あえて天立桂樹のヘイト管理を放棄した12幕以降の展開は?

神木坂レニを味方としてつけたあと、MANKAIカンパニーは天立桂樹という新たな敵に立ち向かうこととなりました。佐久間咲也が演劇に興味を持った原体験の当事者であると初期から聞かされていた人物の度重なる妨害に、心を痛めたプレイヤーも多かったでしょう。

私は個人的に、「12幕の最後で天立桂樹が佐久間咲也のお芝居に感動して悪事をやめる」という筋書きを予想していました。基本的には起きた問題がそのストーリーの中で収束するというのが今までの流れだったからです。しかしながら、最終的にMANKAIカンパニーが無事だったのは天立桂樹が反省したからではなく、あくまで彼に懲罰が下ったからに過ぎませんでした。個人の感想にすぎませんが、このストーリー作りはヘイト管理を意図的に放棄したとも読むことができると思っています。今までヘイト管理を上手く積み上げてきたからこそこの点が意外な展開として機能しており、これ以降の物語への期待を高めています。

さらに言えば、彼の養子である天立甲が何やら今までのA3!で描かれてきた「血」の扱いとは違う方向性の心情を父に対して持っていることをほのめかしており、今後の物語がますます予測不可能になっているとも言えそうです。

 

まとめ

個人的にA3!は「立花の血」という概念を中心にして回っている節があると思っているので、書けてすっきりしました。天立桂樹の悪事周りについてはかなり意外で、A3!にしては異色の展開だという感想を持っています。しかしこれだけの筆力があれば今まで以上の面白い展開が作れるのではないかと考えており、あまり不安がないのがA3!のすごいところです。

 

A3!のストーリーの良さを言語化したい 〜②プレイヤーの演劇リテラシーを育てるのが上手い〜【エースリー】

 

こんにちは。らべです。A3!のストーリーの良さを言語化するシリーズ第二弾です。前回(A3!のストーリーの良さを言語化したい 〜①そもそも演劇という題材がフルボイスのソシャゲに最適〜【エースリー】 - すこやか)は演劇という題材がそもそもフルボイスのソシャゲに合っているというお話をしましたが、ここからはA3!のストーリーの構成や描写の面に踏み込んでいこうと思います。今回は「A3!はプレイヤーの演劇リテラシーを育てるのが上手い」というテーマです。メインストーリーを読んでいることを前提に書いておりますので、未読の方はご注意ください。

また、この記事を書くにあたり、以下のエーアニ初見感想記事を参考にいたしました。

【ミリしら超感想】『A3!』 全話まとめ 経験者目線で読み解く演劇と作品の魅力

 

ストーリーの理解に必要なプレイヤーのリテラシーとは

前回は、ストーリーを成り立たせる最低限の要素として整合性を挙げました。起きた出来事に対する主人公の感情とプレイヤーの感想がちぐはぐになってしまうと、ストーリーにプレイヤーが置いて行かれてしまうということです。

しかしながら、一つの活動を話の中心に据えるストーリーの場合、他にも気を配らなくてはならないことがあります。それがプレイヤーの主題リテラシー向上です。具体的には、A3!ではプレイヤーがストーリーを追う中で自然に演劇の何たるかを理解できるようになっている必要があるということです。A3!のヒロイン・立花いづみは過去に演劇に真剣に取り組んでいたものの挫折したという経歴の持ち主ですが、プレイヤーが演劇の経験者とは限りません。演劇の経験者でなくともストーリーを読んでいるうちに自然と少しずつ演劇に対する知識・知見を身につけられるような構成でなくては、感動的な場面であってもどこに感動することができるのかわからないまま終わってしまいます。

A3!には、プレイヤーがあくまで主人公とニアリーイコールの存在であるという建前を保ちつつも、プレイヤーに演劇への知見を与え物語を読み解くためのヒントを与える工夫がなされています。

 

A3!の段階を踏んだ演劇リテラシー育成

A3!ではどのような流れでプレイヤーが演劇リテラシーを獲得できるようになっているのか、各組の旗揚げ公演の流れとともに見てみましょう。

上記の問題の解決方法はいろいろありますが、最もメジャーなのは初心者が経験者に教わっている姿を描写することでしょう。このときに物語の中で知識を得ているのはキャラクターなのですが、その様子を見ることで読み手も共に学び、その後の読解に活かせるようになるという構図を作れるからです。

A3!では、最初に登場する春組が全員演劇初心者で、経験者のヒロインとさらにベテランのOB・鹿島雄三がアドバイスを加えていくことでこの図式を作っています。組の中に経験者がいたら、上手くまとまるのが早くなりすぎてしまったり、内輪で問題が解決してしまったりして、プレイヤーを置いていってしまっていたかもしれません。

前回述べたように、A3!は演劇をテーマにしているため、ボイスでなんとなく劇団員たちのお芝居の上手い・下手を判断することは比較的容易です。ただ、それがなぜ上手くいかないのか、上手くないとはどういう状態なのかまでは説明できないプレイヤーが多いでしょう。この「なんとなくこう思う」という部分を、鹿島雄三がズバズバと問題を指摘し、立花いづみが改善プランを立てていくという方法で明確にしてくれるところに、A3!のストーリー作りの上手さが見えます。技術を磨いて台詞を届けること、観客を意識すること、高い熱意で取り組むことなど複数の要素で演劇が成り立っていることや、これらをどの程度達成できるかが個人で違っているということが明文化されるわけです。こうして明るみになった問題を乗り越えた先にある春組旗揚げ公演は、非常に感動的なものに仕上がっています。

続く夏組では演劇初心者のみならず、天才子役上がりの有名俳優・皇天馬や、はじめから演技が上手い憑依タイプの斑鳩三角が登場することで幅を持たせつつ、より深く演劇を理解できるようになっています。特に舞台と映像の違いやそこから生じる皇天馬の葛藤などは、初心者のみの春組では描けない点です。皇天馬が他のメンバーの課題や良いところを指摘することで、属人的なそれぞれの芝居の味というものにも踏み込んでおり、より劇団員一人一人が芝居をする意味が浮かび上がってくるようになっています。

さらに秋組では、プレイヤーが春夏で演劇の何たるかをある程度掴んだことを前提に、演劇には個人のプライベートすら乗っかってくるということや、演劇が彼らの人生にもたらす作用をも強く描いています。秋組は群を抜いてストーリーのまとまりが良く評価も高いという印象があるのですが*1、彼らが一番最初に登場する座組であったらここまでの評価は得られなかったでしょう。春と夏の公演を経て演劇がポジティブな変化をもたらしてくれる強い輝きを持った営みだと知っているからこそ、初期の演劇を舐め腐った摂津万里もニコニコしながら見守れるというものです。

最後に登場する冬組は、演劇リテラシーの向上という観点から見れば、どちらかというとエクストラステージ的な役割を果たしています。冬組の面々にとってお芝居の技術的な部分はさほど課題ではありません。稽古もサクサクと進み、一番それらしく仕上がるのが早い組だと言えます。問題となってくるのは個人のプライベートな部分です。秋組のような殴り合いの荒療治ができるわけでもない大人になりすぎた冬組は、ファンタジー的要素も織り交ぜつつ問題に向き合っていきます。特にここで重要となるのが、月岡紬と高遠丞の互いのお芝居へのリスペクトです。ここまでの劇団員たちはほとんど互いのお芝居を見たことがない状態から稽古を積み上げてきたわけですが、彼らは互いが舞台の上でどう演技をするのかよく知っています。彼らのプライベートな感情に影を落としていたのはまさに互いのお芝居への気持ちの強さだったことが判明し、大団円へと向かうことになります。それぞれの劇団員のお芝居には属人的な傾向があることをここまでで十分理解できているからこそ、この展開が効いてくるのです。さらに高遠丞の古巣であるGOD座が取り上げられることで、劇団にもそれぞれカラーがあることや、劇団が劇団員の持ち味に大きな影響を与えることも学べますよね。一度は突然のすこしふしぎ路線でプレイヤーを驚かせつつも、やはり最後は演劇という主題に返ってくるところ、そしてそれが今までプレイヤーが得た知見のどれとも違っていて多角的であるところなどが、さすがA3!だと思います。

このようにA3!は、少しずつ角度を変えながらプレイヤーの演劇への理解を深め、深まった知見によって読解の幅を広げて楽しめるよう自然に誘導してくれているのです。

 

まとめ

今回は特に旗揚げ公演に絞り、順を追ってA3!のプレイヤーの演劇リテラシーを育てる過程を取り上げてみました。とにかくA3!はプレイヤーを置いていかないことに長けているストーリーだということを再確認しています。次は「ヘイト管理の上手さ」について書く予定です。

 

*1:唯一旗揚げ公演時点で全員がある程度素性を明かしているというのも理由の一つだと思います。他の組にはシトロン・斑鳩三角・御影密などパーソナルな部分の事情を明かすのが先になる劇団員がおり、先を読まないとわからない部分もあるので……

A3!のストーリーの良さを言語化したい 〜①そもそも演劇という題材がフルボイスのソシャゲに最適〜【エースリー】

 

こんにちは。らべです。「A3!はストーリーが良い」とよく言われますし、私自身もそう感じているのですが、「ストーリーが良い」とはどういうことなのかをより詳細に言語化してみたいと思います。今回は、「演劇」という題材がそもそもフルボイスのソシャゲという媒体と噛み合っているため、その時点で評価が高くなりやすい要因がすでにできあがっていたのではないかという話をします。シリーズ化し、その他の観点についても順次追加していく予定です。

 

一人称ストーリーの成立要件はプレイヤーと主人公の歩みを一致させること

ソシャゲなどのストーリーにありがちな失敗として、主人公の思考やストーリーの速度にプレイヤーが追いつけないということが挙げられます。特に一人称視点の物語の場合、自分とニアリーイコールであるはずのキャラクターがちぐはぐなことを言っていると、ストーリーを理解すること自体が困難になり、整合性が下がりかねません(=下手と判断される)。

もちろん独特な考え方をする主人公が悪いというわけではなく、描き方次第では魅力的に映りうるでしょう。実際に、A3!のヒロイン・立花いづみも度を超したカレー愛や演劇への強すぎる熱意などにけっこう個性のあるキャラクターです。ただA3!は、個性的なヒロインを通しても、物語上の事実として提示された情報がプレイヤーの受け止め方と異なるということは極力ないように丁寧に作られている印象を受けます。

たとえばサッカーを題材にしたストーリーを作るとして、もともと弱かったチームが試合で勝利できるようになるというポジティブな展開を描く場合には、それなりの練習過程の描写が求められるでしょう。何もせずに勝手に上手くなれるのでは、読み手は物語に置いて行かれてしまいます。さらにその過程や結果を見せる際には、「本当に上手くなっている」「これなら勝てる」と読み手に思わせるだけの説得力あるプレーの描写も必要です。これが「勝ちました」と結果をキャラクターにひとこと言わせるだけだと、一気に感動できなくなってしまいます。このような説得力の構築を、いきなりすぎもせずダレもしない程度のスピード感でこなす必要があるという点が、ストーリーを作る上での難しい第一関門でしょう。

A3!では、公演が成功に向かう過程の描き方は丁寧な心情描写などで達成されているわけですが、ここではその結果の提示のしかたについて、「演劇」という題材がフルボイスのソシャゲという媒体に合っているという話をしてみようと思います。

 

演劇モチーフはフルボイス・ストーリー主体のソシャゲにおける最適解?

ソシャゲにはアイドルや部活動など、さまざまな活動を題材としたものがあります。王道な展開は、これらの活動を成功させる(主人公が成功に導く)というものです。多くの題材があるとはいえ、フルボイスのソシャゲにおいて「演劇」以上のチョイスはなかなかないのではないかと思います*1

それは、活動そのものの成果をボイスで実感できるからです。簡単に言えば、お芝居で劇団員たちが台詞を言っているところをプレイヤーも実際に聞いて良し悪しを判断することができるということです。月岡紬がオーディションで体現したように、台詞だけが芝居というわけではなく、仕草などにも重要な要素はあるのですが、ボイスがつくことでどんな芝居なのかある程度想像が付くわけです。フルボイスで劇団員たちがお芝居をしているところを聞いていると、自然とプレイヤーとヒロインの感想が一致するんですよね。この点のみでも自ずと、劇団員が成長し続ける様子や公演の成功という結果を説得力を持たせて描写することにほぼ問題がなくなるのです。

特に、下手な芝居も成長過程として容易に見せられるところは他と一線を画すでしょう。たとえばアイドルものの場合、楽曲を聴くことでキャラクターたちのアイドル活動の成果を実感できます。しかしメタ的に言うと、楽曲は我々プレイヤーのいる現実世界で商品として売れる一定の水準を保ったものがリリースされることがほとんどだと思います。その点A3!では惜しみなく「演技が上手い人たちが全力で演技が下手な演技をする」ことで、成長途中の描写も浴びられるため、よりダイレクトに公演成功の感動を味わえるのです。

もちろんこれはキャストの皆様の素晴らしい演技があってこそ成立することなのですが、そもそもソシャゲというかなりストーリーの表現方法が狭い(立ち絵と動き・背景・音くらいの)コンテンツで、実際に主題となる活動をやって見せられる(聞かせられる)題材って少ないのではないでしょうか。だからこそ多くのゲームでは、ストーリーで成果を実感させるような演出(音楽や観客の反応の描写など)を加えると共に、アクション・バトルやリズムゲームなどの要素でプレイヤーに擬似的に活動を体験させるという手法が採られることになります。その「体験」要素をA3!はほとんどストーリー(ボイス)部分だけで自然にまかなうことができており、ストーリーを気軽に楽しめるソシャゲとして評価されているのだと思います*2

 

演劇の問題を演劇で解決する主題への真摯さ

さらに、演劇という題材に真面目に向き合っていることもA3!の良さの一つです。

私は他のソシャゲをプレイした際に、「外部から来た問題が外部で解決してしまっている」という印象を受けたことがあります。キャラクターを掘り下げるため、彼らのネガティブなプライベートの経験やその克服について描こうとしていることは理解できたのですが、それらと主題となる活動があまり相互に作用しあっておらず、急に問題が発生し、急に解決し、急に活動が成功してしまったという感想を持ったのです。まさにストーリーにプレイヤーが追いつけていない状態でした。

その点お芝居は特にその人の気持ちや経験などがモロに乗る活動であり、どんなことも糧にできる活動でもあるために、どんなに関係なさそうなプライベートなことも公演の成功のために必要な過程になるんですよね。公演が成功するのは「ちゃんと練習したから」だけでなく、彼らが自分の人生と向き合い課題を乗り越えていくからです。ついてくる結果の説得力をソシャゲに必須と言っていいキャラクターの掘り下げで達成できるのが、演劇を題材にするアドの一つと言って良いでしょう。

しかもA3!は、人の気持ちが演劇にもたらす影響のみならず、演劇が人の気持ちにもたらす影響も描いています。たとえば摂津万里は演劇という自分を高め続けられるジャンルに出会ったことで、大きく人生が変わりました。この両面を描くことで、公演が成功する、演劇の作用が実感できる、演劇を好きになれる、もっと公演が成功してほしいと思える、さらにヒロインとプレイヤーの実感が重なる、強い気持ちがまた公演を成功させる…… というサイクルを回せるのが良いですよね。

 

まとめ

この記事では、A3!が演劇というモチーフを選択したことで、まずは必要最低限の整合性を取りやすくなっていること、そしてソシャゲのストーリーで読み手を感動させるための要素を揃えやすくなっていることを指摘しました。

演劇というジャンルのメリットを最大限使いつつも、ちゃんとその演劇に敬意が払われるというところにA3!の良さの一端があるのだと思っています。

続くかもしれません。

 

*1:A3!1st Anniversary Book「FLOWER」にて、プロデューサーの沖田さんは「学生の頃から舞台観劇が好き」だったため女性向けコンテンツの題材に演劇を選ぼうと思ったと語っています(p208)。

*2:A3!1st Anniversary Book「FLOWER」にて、プロデューサーの沖田さんは「なるべく難易度を抑え、ストーリーを楽しんでいただく」ことに集中できるようにという狙いがあったと語っています(p211)。

THE IDOLM@STER SideM 3rdLIVE TOUR ~GLORIOUS ST@GE!~ 静岡公演1日目初見感想

 

SideM 3rd静岡1日目の初見感想です。FRAMEさんや神速一魂さんやTHE 虎牙道さんあたりが気になっています(好みがわかりやすいですね)。 アイドルオタクなので勝手にハロプロ関ジャニ∞の話もしています。以前Twitterで画像にして投稿したものと同じです。

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